日本内科学会雑誌
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Alpha-fetoprotein産生肺未分化癌の1例
木村 文治古川 恵三菱谷 好高筧 紘一茂在 敏司芝山 雄老中田 勝次
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1982 年 71 巻 12 号 p. 1750-1755

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抄録

原発性肺未分化癌で, alpha-fetoproteinが異常高値を呈した1症例を経験したので報告する.症例は69才,男性.咳嗽,血痰を主訴として,昭和53年12月入院.胸部X線像で右中下野に径11cmの球状陰影を認め,経皮的肺生検の結果, “大細胞性未分化癌”と診断した. alpha-fetoproteinが5050ng/mlと高値を示し,肝シンチ,腹腔動脈造影を行なつたが,肝の形態に著変を認めなかつた.入院後, alpha-fetoproteinは除々に上昇し,最高88000ng/mlを呈した.昭和54年4月右肺全摘出術を施行したが,脳転移をきたし同年6月死亡した.病理解剖所見においても肝に腫瘍性病変および線維化などは認められなかつた.なお,手術切除標本をalpha-fetoprotein特異抗血清を用いた組織蛍光染色で,強陽性を示し,組織内alpha-fetoprotein含有量は42000ng/mlと高値であつた.本例は肝に異常を認めず, alpha-fetoprotein産生が証明された肺未分化癌であるが, “Ectopic hepatoma”とは病理組織学的に異なり,肺と肝が共に前腸由来臓器であることが, alpha-fetoprotein産生能をもつたことと関連している可能性が考えられた.同様の症例は,調べたかぎりわずか2例が報告されているのみであり,肺癌の発性頻度から考えてもきわめて希な症例である.

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