日本内科学会雑誌
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高血圧性腎障害の要因に関する臨床のおよび病理組織学的検討
木村 健二郎
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1982 年 71 巻 3 号 p. 302-311

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抄録

高血圧性腎血管障害および実質障害の臨床的要因,特に血漿レニン活性の役割を検討する目的で,本態性高血圧症患者42例の生検腎標本の組織障害度と臨床的諸事項の推計学的解析を行なつた.細動脈硬化度と硝子化糸球体の割合については0~3の4段階,間質の変化については0, 1の2段階の評価点をつけ組織障害度とした.男女における各評価点の出現頻度に差はなかつたが,評価点の高い(障害の重い)群では,評価点の低い(障害の軽い)群より血圧は高く,腎血流量および糸球体〓過量の低下を認めた.障害度と臨床的事項を総合的に検討するために,三つの障害度の主成分分析を行ない,新たに合成変量を作り(第一主成分),これを総合組織障害度とした.この総合組織障害度は各腎機能検査値と相関係数0.5前後の有意な関係をもち,生検腎という限られた標本を評価する上で有用であると考えられた.変数増減法と多重回帰分析より総合組織障害度と最小血圧値の結びつきが最も強く,血漿レニン活性,年令,高血圧推定経過年および東大3内科高血圧重症度との結びつきは弱いことが示された.さらに血漿レニン活性値に関して両極端にある原発性アルドステロン症7例と腎血管性高血圧症5例を比較検討した.両者間で血圧,および総合組織障害度に有意差は認められず,血漿レニン活性値の組織障害への関与の低さがさらに裏付けられた.

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