日本内科学会雑誌
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Diphenylhydantoinのwarfarin相乗作用について
本田 幸治片山 知之
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1982 年 71 巻 8 号 p. 1114-1119

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抄録

Coumarin系薬物のwarfarinは,現在なお血栓形成予防の目的で使用される場合が少なくない.他方, DPHの抗不整脈作用は最近では広く知られており,たとえば心筋硬塞後のある時期などに両者を併用する場合は必ずしもまれではない. warfarinの抗凝固能を増強する薬物にはaspirinを初め種々のものが知られているが1)~6), DPHに関する記載はGoodmanらの薬理学の成書などにもみられない1)~3).われわれはたまたま両薬物併用に際し,著明な相乗作用を認めた症例を経験したことから,その頻度,程度を明らかにするために13人を対象として以下の検討を行なつた. (1) DPHのwarfarinの相乗作用;対象はwarfarin治療中の患者5名,男2名女3名,年令42~75才,基礎疾患は急性心筋硬塞,切迫硬塞,増帽弁狭窄症兼心房細動である. DPH 200~400mg/日を6~15日間内服させDPH血中濃度とprothrombin time (PT)の推移をみた.結果; PTは全例にてDPH投与後のDPH血中濃度に呼応して延長した.このうちDPH 200mgの3例では15日間投与を続けても前値に比し平均9.5秒と軽度の延長にとどまつた.一方, DPH 300mg 3例, 40Omg 1例ではPTは急速に延長し, 6日間でDPHを中止したのちも, 2~4日間はさらにPTは延長を続けてピークとなり33.6~42.0秒に達した.これは前値に比して8.4~18.5秒(平均12.5秒)の延長であつた.以上, DPHのwarfarin相乗作用は強力,確実で,薬量依存性の傾向を認めた. (2)次にDPH 200~400mg/日, 7~14日間の単独投与5例, DPH 400mg, aspirin 600mg/日, 7日間の併用3例にてPTの推移を検討したが,いずれも有意な延長作用は認めなかつた.

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