日本内科学会雑誌
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糖尿病患者に偶然見出されたビタミンD欠乏症の1症例
高市 憲明小田原 雅人大島 譲二岡 由紀子岡部 富士子山本 通子五十嵐 徹也長谷川 吉康尾形 悦郎
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1982 年 71 巻 8 号 p. 1135-1139

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抄録

成人のvitamin D欠乏症は,本邦では胃腸管手術等の特殊な場合を除き極めて希とされている.最近我々は,糖尿病治療を目的として入院した患者でたまたま発見された著明な低カルシウム血症の病態生理に関する検討からvitamin D欠乏症の併発と診断された1症例を経験した.患者は70才,女性. 20余年に及ぶ糖尿病歴をもつ.生来偏食で,また最近数年間は,網膜症および白内障による視力障害のためほとんど外出していない.入院時, Chvostek徴候,骨痛,近位筋筋力低下の身体所見と,低カルシウム血症,腎機能低下にもかかわらず正燐血症,低カルシウム尿症,近位尿細管型腎尿細管性アシドーシス,骨型ALPの上昇の検査所見を認めた.尿中c-AMPは基礎値高値で外因性PTHに対する反応不良,また血清iPTHも高く,二次性副甲状腺機能亢進症の状態と考えられた.骨生検で骨軟化症が証明され,さらに血清25-(OH) D低値, 1, 25-(OH)2 D正常下限, 24, 25-(OH)2 D測定限度以下であることからvitamin D欠乏によることが明らかとなつた.上記異常は生理量のvitamin D2治療により著明な改善を認め,また血清ALPも予期のごとく上昇反応を示し本症がvitamin D欠乏症であつたことが支持された.当科では最近1年間に本例以外にもさらに3例のvitamin D欠乏症が発見されている.成人のvitamin D欠乏症は必ずしも希ではないと考えられる.さらに,この症例におけるvitamin D欠乏症の病態生理の検討から, vitamin D代謝物のカルシウム代謝に及ぼす影響を最近の知見にも触れて論じた.

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