日本内科学会雑誌
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高心拍出量性心不全を合併した汎発性骨Paget病の1例
宮崎 利久広瀬 信義川村 潤影山 洋飯国 紀一郎柳下 徳雄
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1983 年 72 巻 1 号 p. 47-54

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抄録

症例は39才女性.数年前から四肢の肥大変形がいちじるしくなり, 2年前から労作時に呼吸困難を自覚するようになつた.今回強度の呼吸困難のために当科に入院した.入院時はうつ血性心不全の状態であり,利尿薬,強心配糖体にて治療をおこなつた.血清アルカリフォスファターゼ25.9K-AUと上昇し,ハイドロオキシプロリンの尿中排泄は192mg/日と増加していた.骨X線検査ではほとんど全身の骨に肥厚硬化像を認め,骨組織ではosteoclastによる骨吸収とosteoblastによる骨新生が混在し, lamellar boneの旺盛な形成とこれにともなうmosaic patternを認めた.以上の所見から汎発性骨Paget病と診断した. Swan-Ganzカテーテル検査により安静時心拍出量7.96L/min,心係数4.77L/min/m2と高心拍出状態が証明された.ま心腔内におけるstep-upをともなわずに混合静脈血酸素飽和度が90%と著しく高いことから,病変骨における血管増生,動静脈痩によつて高心拍出量性心不全をきたしたものと考えられた.本邦においては骨Paget病は希な疾患であり,未だ高心拍出量性心不全を合併した症例の報告はない.さらに著老らはムコ多糖分解酵素を用いて,病変骨マトリックスにおいて,生理的には存在しないデルマタン硫酸が豊富に存在していることを証明し,本疾患の骨マトリックスにおける質的な異常を示唆する,興味深い知見を得た.

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