日本内科学会雑誌
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Cisplatinによる急性腎不全の1例
水村 泰治松本 三千夫高田 正信飯田 博行杉本 恒明
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72 巻 (1983) 10 号 p. 1426-1431

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抄録

53才,男性.嚥下困難と呼吸困難にて昭和57年1月下咽頭扁平上皮癌と診断され,約1カ月の間に総量2,880radの放射線療法を受けた後,本学耳鼻科に入院した.入院後5日間にわたりcisplatin総量120mgをマニトールや輸液とともに投与された.投与中止6日目にBUN 78mg/d1,クレアチニン5.2mg/dlと高窒素血症を呈し, Caは7.9mg/dlと低下した.当科転科時(中止後10日目),血圧138/88,尿量は1.5l,検尿でタンパク(±),沈渣で多数の赤血球がみられた. BUN 73mg/dl,クレアチニン4.2mg/d1,尿酸11.7mg/dl, GFR 13.5ml/min, RPF 135.5ml/min,尿浸透圧359mOsm/lであつたが,漸次BUN,クレアチニンは減少してきた. cisplatin中止後31日目に施行した腎生検では,尿細管に多数の小空胞がみられ,一部の尿細管に核の消失,細胞の脱落がみられ,間質はび漫性に線維化し, tubulo-interstitia1 nephropathyの像であつた. 37日目の最大尿浸透圧は511mOsm/l, 39日目のGFRは27.5ml/min, PRFは278.5ml/minと回復したが,まだ低値であつた. cisplatinによる急性腎不全の回復には長期を要するものと思われる. cisplatinは白金を含む抗癌剤であり,種々の腎障害が報告されているが,本邦ではまだ限られた施設でしか使用されていない.しかしこれが広く一般に使用されるようになると急性腎不全の頻度が大きくなると思われるので,その使用に際しては腎機能の厳重な監視が必要であろう.

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