日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
慢性腎不全における二次性副甲状腺機能亢進症の対策ことに副甲状腺摘出について
今川 卓一郎大島 伸一天野 泉杉山 敏藤田 民夫富田 明夫
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 72 巻 12 号 p. 1720-1730

詳細
抄録

慢性腎不全,殊に血液透析患者においては二次性副甲状腺機能亢進症を合併し,骨関節痛,異所性Ca沈着などの症状が出現する事が多い.著者らはこれらの症状が活性型ビタミンD投与など内科的療法によつても改善しない主として血液透析中の慢性腎不全患者22名に副甲状腺摘出を施行し,本手術の持つ意義につき対象患者の術前の症状,血清Caあるいは副甲状腺ホルモン(以下PTH)値などにおよぼす影響,副甲状腺組織像に検討を加えた.副甲状腺摘出がこれら症状に対して著効を示した症例は22例中15例でこれらは全て術前血清PTH値は著しい高値であり,また摘出副甲状腺も著明な肥大を示し,その組織所見はほとんどhyperplasiaであつた.術前高Ca血症を示した症例のうち1例は腎移植患者で副甲状腺摘出後血清Ca値は低下した.また著しい高Ca血症を示した1血液透析患者ではその副甲状腺組織は腺腫が疑われた. 1腎移植例では腎移植の成功で腎機能が回復すると血清PTH値は低下し,骨関節痛および骨X線像上吸収像の改善をみたが,これらはその後の拒否反応による腎機能の低下とともに再び悪化した.以上より本疾患においては副甲状腺摘出の適応は, (1)明らかな二次性副甲状腺機能甲進症による症状が内科的治療により改善しないもの, (2)経過中高Ca血症を来し,三次性副甲状腺機能亢進症が疑われるもの,以上2点であるが,別に腎移植の持つ意義も大きく,今後に期待出来る.

著者関連情報
© (社)日本内科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top