日本内科学会雑誌
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家族性褐色細胞腫 症例報告と本邦例のまとめ
安達 みち子三浦 幸雄安達 眞樹木村 忍富岡 洋禰津 光廣吉永 馨斎藤 敬太郎
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1983 年 72 巻 12 号 p. 1740-1748

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抄録

家族性褐色細胞腫の父子例を報告し,文献上知りえた本邦の家族性褐色細胞腫15家系37例について考察を加えた.症例1: 13才,男子.家族歴では父の従姉の長男が両側副腎褐色細胞腫と診断され腫瘍の摘出術を受け,また父方叔母は甲状腺腫瘍摘出術を受けている.昭和55年5月,悪心〓吐を伴う激しい頭痛を主訴に近医を受診し,高血圧,尿VMA陽性およびレギチン試験陽性の所見から褐色細胞腫を疑われ当科に紹介された.血漿および尿catecholamine値の異常高値が証明され,精査の結果,左副腎褐色細胞腫と診断が確定した.術後,同腫瘤は左副腎褐色細胞腫と傍神経節腫が1塊になつたものと判明した.症例2: 46才,男子(症例1の父).昭和55年7月,症例1の家族検索時に血圧は正常範囲内で自覚症状もなかつたが,血漿catecholamine濃度が高値を示し褐色細胞腫が疑われた.精査の結果,右副腎褐色細胞腫と診断が確定し,同腫瘍が摘出された.文献上集録しえた本邦における家族性褐色細胞腫例は今回報告例を含め15家系37例であつた.各家系の発端者の診断時平均年令は32.6±3.5才,平均腫瘍重量130.4±46.8gであつた,腫瘍発生部位は全例副腎であり,うち58%の症例では両側副腎に腫瘍を認めた. 24.3% (9例)に甲状腺髄様癌を, 8% (3例)に副甲状腺腺腫または過形成の合併を認めた.家族性褐色細胞腫の家系内発生頻度は比較的高く,患者の血縁者については症状の有無にかかわらず広く検索する必要がある.

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