日本内科学会雑誌
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二重房室伝導経路を伴つたA型Wolff-Parkinson-White (WPW)症候群の1例
早野 元信鶴田 満浩森 久雄高柳 和弘井上 純一松尾 修三
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1983 年 72 巻 12 号 p. 1756-1761

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抄録

WPW症候群に二重房室伝導経路を伴つた1例を報告する.症例は49才,男子で,動悸発作の精査のためヒス束心電図による電気生理学的検査を行なつた. Kent束の正伝導性の有効不応期が房室結節のfast pathwayの有効不応期より長いために,心房早期刺激法でA1 A2間隔を短縮させていくと, Δ波は消失しQRS波は正常化した.さらに短縮させていくと,急にA2 H2時間の延長(jumping phenomenon)が認められ,房室伝導曲線でA2 H2時間が不連続となり,二重房室伝導経路の存在が明らかとなつた.このfast pathwayからshow pathwayに移ると同時に発作性上室性頻拍が生じた.心室頻回および早期刺激法では, VA′(逆行性高位右房波)時間が一定でKent束を逆伝導していることを示唆する所見であつた.以上より本例の発作性上室性頻拍の誘発には,二重房室伝導経路が関与し,そのreentry回路は順行性に房室結節を通り,逆行性にKent束を通ることが考えられた.

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