日本内科学会雑誌
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再燃時に中枢神経系浸潤を認めた胃原発B-cell lymphomaの1例
桑原 由孝吉川 治哉岡 勇二吉川 敏伊藤 庄三楠神 和男宇野 裕
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1983 年 72 巻 4 号 p. 468-472

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抄録

症例は85才の男性で,腹部膨満感を主訴として当科へ入院した.理学的所見では,左上腹部に手拳大の腫瘤,胸水および腹水を認め,胃透視および胃内視鏡にて,胃体部後壁にgiantfoldと不整形の潰瘍を認めた.同部位よりの生検にてmalignant lymphoma (diffuse and mixedtype)と診断した.腹水,胸水および骨髄にリンパ球様異型細胞を認め,腹水中異型細胞の表面マーカー検索にてB-cell由来が示された. COP (cyclophosphamide 500mg/w, vincristine lmg/w, prednisolone 15mg/d)療法7コースにて腹部腫瘤,腹水および骨髄中のリンパ球様異型細胞は消失し,胸水も減少した.退院後COP療法2コースが追加されたが, 3ヵ月後患者は食欲不振,右肋間痛を訴えて再入院した.理学的所見より両側頚部のリソパ節腫脹を認め,また,髄液細胞診にてリンパ球様異型細胞を認めた.同細胞は,表面マーカー検索の結果やはりB-cell typeであつた.そこで, VENP (vincristine lmg/w, cyclophosphamide 500mg/w, Natulan 100mg/d, prednisolone 30mg/d)療法を行なつた.合わせて, methotrexate 15mg, hydrocortisone 20mgを計4回髄注し,髄液中のリンパ球様異型細胞の数は減少したが,患者は肺炎を併発し,心不全にて死亡した.剖検にて,本例は胃原発であることが示された.

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