日本内科学会雑誌
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本態性高血圧症患者におけるカリウムの降圧効果
安東 克之藤田 敏郎山下 亀次郎
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1983 年 72 巻 7 号 p. 882-889

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抄録

本態性高血圧症における食塩負荷時の血圧上昇に対するカリウム投与の影響を検討する目的で, 23名の本症患者に低塩食(NaCl25mEq/日)を3日間施行したのち, 6日間食塩(250mEq/日)のみを負荷した群(NaCl単独群)12名と,同量の食塩に加えてカリウム96mEq/日を投与した群(NaCl+KCl群)11名に分け,比較した.その結果, NaCl+KCl群ではNaCl単独群においてみられた食塩負荷時の血圧上昇は認められず,平均血圧の変化率はNaCl単独群に比し有意の低値を示した.尿中ナトリウム排泄はNaCl+KCl群で食塩負荷早期(第1および第2日目)に有意の増加を認め, NaCl+KCl群における食塩負荷6日間のナトリウム貯留はNaCl単独群に比べ有意に減少していた.さらに,カリウムを同時に投与することにより,食塩負荷時の体重増加,循環血漿量増加および心係数増加が有意に抑制された.食塩負荷時における平均血圧の変化率と循環血漿量および心係数の変化率との間には有意の正の相関が認められた.また, NaCl+KCl群では体液貯留の抑制に伴い,血漿レニン活性,尿中アルドステロン排泄がNaCl単独群に比し有意の高値を示していた.以上の結果から,カリウムは本態性高血圧症患者における食塩負荷時の血圧上昇を抑制する作用を有しており,その主要機序としてナトリウム利尿による循環血漿量および心拍出量増加の抑制が考えられた.

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