72 巻 (1983) 7 号 p. 941-946
重症筋無力症(MG),全身性紅斑性狼瘡(SLE),潜在性副甲状腺機能低下症(HP)の合併した1例を報告した.症例は35才,女性で, 14年前に複視,眼瞼下垂,四肢筋の易疲労性で発症し,テンシロン試験陽性,誘発筋電図でwaningを示した全身型MGで,抗コリンエステラーゼ剤で治療していた. 5年前に関節痛が出現したが,自然に消失した.昭和55年10月胸痛出現,胸部X線像で滲出性肋膜炎と診断され入院した.理学的には,複視,眼瞼下垂,近位筋の筋力低下があつた.検査所見で,血沈の亢進,白血球数の減少, LE細胞陽性,抗核抗体・抗ds DNA抗体陽性,血清補体の低下, T細胞の相対的・絶対的減少, PHAによるリンパ球幼若化率の低下が見られた.血清Ca (8.5~9.0mg/dl)は低く,血清P (4.5~4.6mg/dl)は一過性に上昇した.藤田らの方法に従つたEDTAによる副甲状腺ホルモン分泌試験では,血清Caの低下が著しく,回復遅延を示し,さらにcPTH (ヒト)の変動がほとんどなく,副甲状腺ホルモン分泌係数(PI),副甲状腺分泌刺激係数(PSI)はおのおの0.031, 1.17と著しく低下していた.ビタミンD3, 25OHD3は正常であつた.胸腺腫はなかつた. MGとSLEの合併は比較的少なく,本邦では今迄4例が報告されている. MGとHPの合併は極めてまれで,現在まで2例しか報告されていない. 3者の合併した報告例は,私共が調べた限り今迄になく,本例が初めてであり,興味あるものとして報告した.