日本内科学会雑誌
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全身性エリテマトーデスに汎発性皮下軟部組織石灰沈着症を合併した1症例
上遠野 栄一椛島 悌蔵河野 一郎山根 一秀桜井 徹志柏木 平八郎
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1983 年 72 巻 8 号 p. 1063-1067

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抄録

全身性エリテマトーデスに軟部組織の石灰化が併発した報告は希である.今回我々はかかる1症例を経験し,摘除した石灰化結節の組織学的検討と成分分析を行なつたので,その成績を報告する.症例は46才,女性. 31才時に発熱,多発関節炎,日光過敏症,脱毛,蛋白尿,白血球減少が出現し全身性エリテマトーデスと診断され,ステロイド投与を受けた. 40才頃より皮膚の脆弱性を認め,その2年後には下腿浮腫が出現し難治性の潰瘍を合併するようになり,昭和55年7月当院入院となつた.入院時両下腿に潰瘍と瘢痕を散在性に認め,皮下に多数の結節を触れた.皮下結節は両上腕および殿部にも認められ,これらはX線写真上直径数cmの石灰化として証明された.血液,尿,腎機能,免疫学的検査では中性脂肪の増加と抗核抗体強陽性(diffuseパターン), LE細胞陽性のほかは正常であつた.両上腕および殿部の結節は圧痛著しいため摘除した.摘除された結節は皮下脂肪層から深層におよんでいたが,筋膜には至らず,線維性の結合織により被覆され,一部は脂肪壊死巣に隣接していた.本結節はプラズマ発光分析と赤外線スペクトル分析の結果,リン酸カルシウムおよび炭酸カルシウムが主成分であると推定された.筋肉注射や打撲をうけた部位に一致して石灰化結節が生じたことより軟部組織の外傷が石灰化の誘因と推測された.

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