日本内科学会雑誌
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自己免疫性溶血性貧血発症7年後に悪性リンパ腫を合併した1例
広沢 信作村上 直巳工藤 秀機桃井 宏直神山 隆一
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1983 年 72 巻 9 号 p. 1171-1176

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抄録

自己免疫性溶血性貧血(以下AIHAと略す)発症の約7年後に,悪性リンパ腫を合併した1例を経験したので報告する.症例は60才の女性で, 7年前に全身倦怠感が出現し近医で貧血を指摘され当科へ入院した.肝脾腫を認め,検査所見で高度の貧血と網赤血球増加,間接ビリルビンとLDHの上昇,ハプトグロビンの低下,赤血球寿命の短縮,直接ク-ムス試験陽性,骨髄の赤芽球系過形成があり, AIHAと診断した.プレドニゾロン60mg/日にて貧血は改善した.その後1年間は減量して20mg/日で維持していたが,貧血が高度となり脾臓摘出術を受けた.手術時悪性リンパ腫を示唆する所見はなく,術後貧血は改善した.プレドニゾロン5mg/日にてその後6年間維持していたが,腰椎圧迫骨折が出現したためアザチオプリンに変更した.動悸と上腹部不快感があり,再入院したが, AIHAの増悪と胃潰瘍が認められた.潰瘍の生検にて悪性リンパ腫(LSG分類によればlarge cell type)と診断した.胃2/3切除と化学療法(サイクロフォスファマイドとビンクリスチン)2ク-ルとを行ない退院した.しかし, 3ヵ月後に悪性リンパ腫の骨髄への高度浸潤と汎血球減少症をおこし再入院したが,敗血症を併発し死亡した. AIHAと悪性リンパ腫が同時あるいは悪性リンパ腫の経過中に合併することは多いが, AIHAが先行することは少ない.本邦例2例を含め17例の報告があるのみであり,両疾患の病因を考える上で貴重な症例と考え報告する.

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