日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
Signet ring cell lymphomaの1症例
星 秀樹阿部 敬谷内 昭正木 章二石井 禎郎奥山 富三小笠原 実高見 剛
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 72 巻 9 号 p. 1195-1201

詳細
抄録

Kim, Rappaportら(1978)により提唱されたsignet ring cell lymphoma (SRCL)は,これまで10例の報告をみるにすぎない.経験した症例は本邦初めての記載と考えられるが, 34才,女.左腋窩の約5cm大腫瘤と左上肢しびれにより来院.血清タンパク電気泳動および免疫電気泳動によりMタンパクを認めず,胸部X線像,消化管および肝・脾の画像診断,リンパ管造影でも異常を認めず,悪性リンパ腫stage IAと考えられたが,経過中左側頚部リンパ節の腫脹を認め, stage IIAと判断された.左腋窩リンパ節生検による組織分類では, nodular & diffuse poorly differentiated lymphocytic lymphoma (N & DPDL)で,ところどころに細胞質内に好酸性のRussell body様封入体を有する細胞およびsignet ring cell様細胞を認め,これらの細胞質はジアスターゼ抵抗性PAS陽性であつた.免疫酵素抗体法(PAPA)では,これらの細胞の多くの細胞質に単クローン性免疫グロブリン(μ/x)を証明し, SRCLと診断した.文献的には本例を加えて11例の報告があり,平均年令55才,男性3例,女性8例で女性が多く,予後良好である特徴を有する.しかし,その疾患単位の確立には多数例の集積による検討が必要である.

著者関連情報
© (社)日本内科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top