日本内科学会雑誌
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極端な高IgE血症を伴つたSézary症候群の1例
IgEクラス特異的ヘルパーTリンパ球の腫瘍性増殖
満屋 裕明佐藤 昌彦藤本 幸示河野 文夫岸本 進平野 俊夫
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1983 年 72 巻 9 号 p. 1202-1210

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抄録

全身性リンパ節腫大と7年来の全身性紅斑と, 564000IU/mlという極端な高IgE血症を伴つたSézary症候群の1症例を経験した.白血球数は45, 200/mm3で,うち51%が雛襞形成,分葉傾向の強い異常リンパ球で占められていた.皮膚にも同様の異常リンパ球が浸潤しており,この細胞は透過電顕で観察すると深い切れ込みのある核を有していた.末梢血リンパ球(PBL)中,ヒツジ赤血球とロゼットを形成する細胞は94.2%で, Tリンパ球分画ではLeu 2a+細胞は1.0%, Leu 3a+細胞は100%, Leu 3b+継胞は98.2%であつた.この患者PBLからT, Bリソパ球を分離し, in vitroで種々の混合培養試験を行ない,産生されたIgG, IgA, IgM, IgEをradioimmunoassayで定量すると,患者Bリンパ球(PB)はpokeweed mitogen, Tリンパ球の非存在下で多量のIgEを産生し,このIgE産生は正常丁リンパ球(NT)によつて抑制されることがわかつた.患者Tリンパ球は正常Bリンパ球の1gE産生を著しく高めたが, IgG, IgA, IgMの産生についてはNTよりも弱いヘルパー活性しか示さなかつた.以上のことから,本症例でみられた異常なリンパ球の増加はIgEクラス特異的ヘルパーTリンパ球の増殖によるものであり,同時に観察された高IgE血症はおそらくこのヘルパーTリンパ球によつてPBがポリクロナールに活性化されたためにおこつたものと考えられた.ヒトIgE産生機構について最近の知見を含めて考察を加えた.

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