日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
仁丹大量摂取により生じた低カリウム血性筋症の1例
杉本 孝一塩之入 洋井上 幸愛金子 好宏
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 73 巻 1 号 p. 66-70

詳細
抄録

少量の甘草摂取により,低カリウム血性筋症をきたした偽アルドステロン症と思われる1例を経験した.本症例は,著明な筋力低下と知覚障害を呈し,血清カリウム低値および筋逸脱酵素活性の著しい上昇から,低カリウム血性筋症が疑われ,カリウム補充療法を受けた後,入院した.低カリウム血症の原因として,既往歴から,消化管からのカリウム喪失は否定的であつた.内分泌学的検査では,甲状腺機能正常,尿中17-KS, 17-OHCS値正常であつた.一方,血奨レニン活性は低下していたが,血中アルドステロン値は比較的低値ながら正常範囲であり,原発性アルドステロン症も否定された.薬剤服用歴において,甘草製剤の服用は否定されたが,「仁丹」の長期摂取歴があり,以上の検査所見,および「仁丹」摂取の既往から,本剤に少量ながら含まれる甘草による偽アルドステロン症が,本症例の低カリウム血症の原因であると考えられる,本症例の「仁丹」摂取量から換算すると1日あたりのグリチルリチン摂取量は20mg程度であると思われる.かかる少量の甘草摂取により偽アルドステロン症を生じ,これにより,低カリウム血性筋症をきたした症例はまれと考えられ,また,同時にグリチルリチン負荷試験を行ない得たので,この結果をあわせて報告する.

著者関連情報
© (社)日本内科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top