日本内科学会雑誌
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原発性心膜中皮腫の1例とその心エコー図所見
小池 清一原 卓史川 茂幸佐々木 康之平林 秀光吉岡 二郎松尾 孝本間 達二古田 精市
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1984 年 73 巻 10 号 p. 1477-1484

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抄録

症例は37才の男性.咳漱,呼吸困難胸部絞扼感を主訴として来院.来院時,頻脈・奇脈・心拡大を認め,胸部X線像では心胸郭比59%,心電図では洞性頻脈と低電位差を認めた.心エコー図では心周囲に広範なecho-free spaceを,また左室後側壁に不規則な塊状エコーを認めた.以上より心タンポナーデと考え心膜穿刺を施行した.心膜液はHb 5.5g/dlと血性を示し,一般細菌・結核菌培養陰性で,細胞診はClass IIであつた.経過中,心エコーで左室後側壁に明らかな腫瘍状エコーを認めた.腫瘍状エコーは嚢胞状の構造を呈し,またその表面から数本の索状のエコーが伸びていた.心膜腔気体撮影では,心膜腔内の異常構造物,心輪郭の不整化所見,心膜の肥厚所見が認められた.以上の所見から心膜腫瘍を疑い開胸手術を行ない,悪性中皮腫と診断された.心膜原発の中皮腫は,本邦では1983年までに本例を含め37例の報告があり,比較的まれな疾患とされる.従来,心膜腔内病変の描出は困難で,生前に正しく診断された症例は極めて少ない.著者らは,心エコー法等により心膜腔内の腫瘍性病変,さらにその内部構造を観察しえた.各種の画像診断法の活用が本疾患の診断に有用と考えられた.

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