日本内科学会雑誌
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虚血性心疾患診断における運動負荷201Tl心筋single photon emission computed tomography (SPECT)の有用性と限界
二神 康夫
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1984 年 73 巻 11 号 p. 1630-1642

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抄録

運動負荷201Tl心筋SPECTの虚血性心疾患(IHD)診断における有用性と限界について, IHD 123例,対照15例を対象に検討した. SPECTはplanar法に比べIHD診断率(96%: 89%, p<0.01),個々の罹患冠動脈の検出率(左前下行枝84%: 68%, p<0.005,左回旋枝60%: 47%, NS,右冠動脈88%: 69%, p<0.01),多枝病変(左前下行枝+左回旋枝and/or右冠動脈)検出率(53%: 31%, p<0.025),三枝病変検出率(60%: 13%, p<0.005)を有意に向上させ,さらに,中隔と側壁のなす角度の心尖部へ向かつての開大と,広範な前壁側の欠損および内腔拡大所見により心室瘤の検出も可能とした(sensitivity 94%, specificity 84%).一方診断精度は梗塞例に比べ狭心症例で,一枝病変に比べ多枝病変で,狭窄の高度なものに比べ軽度なもので,後下壁梗塞,前壁+後下壁梗塞に比べ前壁梗塞で低下した.梗塞部位での一過性虚血(前壁梗塞36%,後下壁梗塞24%)と心室瘤(前壁梗塞21%,後下壁梗塞0)の存在は,梗塞例での多枝病変検出を困難とする因子と考えられた.以上より,運動負荷201Tl心筋SPECTはIHDの検出,個々の罹患冠動脈の検出,多枝病変の検出(特に後下壁梗塞,前壁+後下壁梗塞),三枝病変の検出,心室瘤の検出に有用な非侵襲的検査法であるが,前壁梗塞例,狭心症例における多枝病変検出には限界があると考えられた.

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