日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
非機能性副腎腫瘍のステロイド生成能
小島 元子斎藤 万一郎伊藤 信雄草野 良郎福地 總逸
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 73 巻 11 号 p. 1649-1655

詳細
抄録

非機能性副腎皮質腫瘍と診断される例が,果してステロイドを全く産生しないか,また臨床症状を呈しないものの何らかのステロイドを分泌しているのかは,不明である.そこで,臨床的に非機能性副腎皮質腫瘍と診断された症例5例および剖検時に偶然発見された副腎腺腫2例の計7例について,血中あるいは組織中ステロイドを測定した. Case 1は,右副腎癌の摘出術後, o, p'-DDDを投与され, 1週間目の血漿progesteroneが512. 8ng/100mlと高値であつた.肺転移が増大した死亡直前には,血漿pregnenoloneおよび17α-hydroxypregnenoloneは,著増した. Case 2は,血尿の精査の際に副腎腫瘍を発見され,最大径1.5cmの副腎腺腫の摘出を受けた.術前の血圧は, 150/102mmHgと高く,術後正常化した.術前の血漿ステロイドは正常で,腫瘍組織中DOCが正常皮質の2倍の高値を示した. Case 3および4は,腹部CTで偶然副腎腫瘍を見い出され,摘除術を受けた. Case 5は,下垂体性Cushing病で副腎亜全摘術の際に,過形成副腎皮質に腺腫を伴つたことを発見された.これら3例および剖検例の副腎腺腫組織中ステロイド含量は,低値であつた.以上から,非機能性副腎皮質腫瘍は,生物活性を示さないステロイドを多量産生するもの,生物活性の弱いステロイドを過剰に分泌するが臨床症状が極めて軽微なもの,ステロイド産生能が極めて低いものの三型に大別される.

著者関連情報
© (社)日本内科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top