1984 年 73 巻 11 号 p. 1656-1664
患者は27才の男性で,反復する心室頻拍,漸次進行するうつ血性心不全を呈し,原因は不明で拡張型心筋症として対処されたが,約半年の経過で死亡した.心室頻拍反復のため心筋生検は不可能であつた事情もあり,その臨床病像には特にサルコイドーシスを示唆するところはなかつた.しかし,剖検ではサルコイド肉芽腫がその心筋に広範に認められ,また臨床上は指摘でぎなかつた肺門リンパ節などのリンパ組織にもわずかながらそれが認められたことからfatal myocardial sarcoidosisと考えられた. fatal myocardial sarcoidosisは全般的にもその生前診断が難しいものであり,心筋疾患あるいは原因不明の重篤不整脈として扱われている場合が多い.したがつて,その生前診断は臨床上一つの問題点といえる.