日本内科学会雑誌
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Sjögren症候群とsystemic lupus erythematosusを合併し,抗T3自己抗体を認めた慢性甲状腺炎の1例
安藤 和子斎藤 公司高井 孝二山本 邦宏葛谷 健吉田 尚武田 昭湊 長博狩野 庄吾
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1984 年 73 巻 11 号 p. 1680-1685

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抄録

Sjögren症候群,全身性エリテマトーデス(SLE)および慢性甲状腺炎を合併した1症例において,抗トリヨードサイロニン(T3)抗体の存在を証明したので報告する.症例は46才,女性で, 37才時慢性甲状腺炎と診断されたが,甲状腺機能は正常であつた. 45才頃より,嗄声,口腔内乾燥感,顔面,手足の紅斑が出現したため,当院に入院.諸検査所見より,慢性甲状腺炎の他に, Sjögren症候群,さらにSLEが合併していると診断された.甲状腺についてはthyroid test (TGHA) 409600倍, microsome test (MCHA) 102400倍,サイロキシン(T4) 4.2μg/dl, T3 (RIA, polyethylene glycol法, PEG法) 5ng/dl以下, TSH 5.9μU/ml, TRH testでTSHの過剰反応傾向あり, 131I-甲状腺24時間摂取率6.4%であつた.慢性甲状腺炎による軽度の甲状腺機能低下状態にあると考え, T4 100μg/dを投与したところ,血中T4値は正常化したが,血中T3値(PEG法)は依然測定不能の低値であつた.また, T3を二抗体法で測定したところ,測定限界以上の高値であつた.そこで,患者血清中に抗T3自己抗体の存在する可能性を考え検索したところ,その存在を証明し得た.また,本症例では,経過中, TGHA値の上昇に伴い, T3が測定不能となり,さらにSLEに対するステロイド治療によりTGHA値が低下するのに伴い, PEG法にても二抗体法にても, T3の測定値は測定限界内に入つてきた.同時に患者血清のT3結合能の低下が認められた.これらの所見は,抗T3自己抗体とサイログロブリンとの関係を考える上で興味深い知見と考えられた.

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