日本内科学会雑誌
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胃病変を伴つたhypereosinophilic syndromeと思われる1例
市川 健司笠貫 順二末石 真今泉 照恵小関 秀旭金子 良一冨岡 玖夫徳政 義和吉田 尚
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1984 年 73 巻 11 号 p. 1697-1702

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抄録

胃粘膜病変を伴つたhypereosinophilic syndromeと思われる1例を報告する.症例は56才,男性.昭和58年7月より発熱,労作時呼吸困難,咳,下痢が出現した.他医にて間質性肺炎・好酸球増加症を指摘され,各種抗生物質を投与されるも効果なく昭和58年8月10日当科入院.入院時,指趾にチアノーゼを認め肺野では湿性ラ音が聴取された.検査所見では白血球24100/mm3,好酸球11600/mm3と増加し,血沈亢進, CRP強陽性で強い炎症の存在が認められた.胸部X線検査では全肺野に細網顆粒状陰影が認められ肺炎と診断した.肺炎の原因の検策を種々行なつたが, RA・RAHAが強陽性の他は異常所見なく, malignancy・sarcoidosisも否定された. TBLBにより, peribronchial stromaとalveolar wallに好酸球の浸潤を認めた.激しい下痢が続くので消化管の検策を行なつたところ,胃内視鏡検査で穹窿部から胃角部にかけて強い発赤が散在し,同部位の生検組織では著明な好酸球の粘膜内浸潤が認められた. prednisolone投与の3日前に行なつた大腸内視鏡検査は異常なく,小腸の検策は全身状態不良のため行なえなかつた.下痢は,抗生物質投与による, drug-induced colitisによるものと考えられた.以上の検査所見より,本症は, hypereosiphilic syndromeが最も疑われ, prednisolone 60mg/dを投与.自覚症状・検査所見の速やかな改善をみた.投与16日後に施行した胃内視鏡検査では,発赤は消失していた.本症例の胃病変は,いわゆるeosinophilic gastroenteritisの肉眼所見とは明らかに異なつており,病因論的に示唆に富む症例と思われる.

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