日本内科学会雑誌
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異常Q波と徐脈・頻脈症候群を伴い, AV sequential pacingが有用であつた拘束型心筋症の1症例
浜重 直久土居 義典米沢 嘉啓楠目 修貞包 典子小沢 利男中山 康河村 慧四郎
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1984 年 73 巻 12 号 p. 1849-1855

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抄録

症例は45才,女性.半年前からの動悸およびめまい発作のため入院した.胸部X線像上CTRは57%で,心電図ではI・aVL・V4-6の異常Q波と著明な左軸偏位を伴う心室内伝導障害がみられた.心筋梗塞又は心筋症の疑いで心血管造影を施行し,左室心尖部のakinesisをみとめたが,冠動脈は正常であつた.左室の拡大はみられなかつたが, LVEDP 36mmHg・CI 2.08l/min/m2と高度の心機能低下を示した.右室心筋生検では, amyloidその他の沈着は認めなかつたが,中等度の心内膜の肥厚を示し, endomyocardial diseaseによる拘束型心筋症と診断した. Holter心電図で発作性心房細動を認めたため, digitalis・disopyramideを投与したところ,最高7秒の心停止を頻発した. RA pacingによる心拍出量の改善が著明であり,かつ伝導障害を伴うため, AV sequential pacingを行ない,症状改善に非常に有効であつた.拘束型心筋症は,本邦では比較的まれな疾患であり,異常Q波・壁運動異常や不整脈の合併に関する詳細な記載はほとんどみられない.異常Q波の成因や,徐脈を伴う本症におけるAV sequential pacingの利点などにつき,文献的考察を加え報告する.

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