日本内科学会雑誌
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心エコー図法で生前診断された三心房心の1症例
東 伸郎土手 健司栗本 透唐川 正洋馬殿 正人西原 祥浩森 晃基酒井 章稲田 満夫延吉 正清
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1984 年 73 巻 3 号 p. 408-413

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抄録

症例. TO, 25才,男性.主訴は労作時の息切れと動悸.前胸部に全収縮期雑音を聴取し,胸部X線像では軽度心拡大,肺うつ血所見を認め,心電図では右室肥大所見を示した.心エコーMモードスキャンで,左房内を大動脈後壁から僧帽弁弁輪部の左房後壁にかけて,左房内をななめに横切る索状エコーを認め,断層法において左房内に異常隔壁とその中央部に交通孔の存在が確認された,心臓力テーテル検査でシャント疾患は否定,肺動脈からの左心造影により左房内の異常隔壁を明瞭に描出できた.患者は手術待機中であつたが,肺水腫にて急死した.剖検で左房内に異常隔壁があり直径8mmと3mmの2カ所の交通孔を確認しえた.又右室壁厚は7mmと著明に肥厚していた.組織学的には結合織に富む心筋線維からなり,一部に石灰化が見られた.本症例はLucasとSchmidtの分類によるタイプIAに属していた.三心房心は現在では,手術的に充分根治し得る先天性心奇形である.その手術成功のためには正確な術前診断が大切である.心エコー図法,とりわけ断層法による所見は,剖検所見ともよく一致し,診断法として極めて有用であつた.心エコー図法により診断されたまれな先天性心奇形である三心房心の1例を報告した.

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