日本内科学会雑誌
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腹部大動脈瘤,両側総腸骨動脈瘤に伴つた巨大左内腸骨動脈瘤の1例
丸尾 國造水嶋 宜章竹平 安則
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1984 年 73 巻 3 号 p. 414-419

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抄録

尿閉と便秘を主訴とした72才の男性患者.前立腺の奥に弾性やや硬の非拍動性腫瘤を直腸診で触知した.腹部単純X線検査で骨盤内に4個の結石像を,注腸X線検査で直腸, S字状結腸の左側からの腫瘤による圧排像を,経静脈腎盂造影法で左水腎症と右尿管の軽度の拡張所見を認めた.腹部CT検査では,腹部大動脈,両側総腸骨動脈に動脈瘤を認め,さらに骨盤内には比較的薄壁で,内部はlow densityの巨大腫瘤がみられた.しかしRI血管造影法では,腹部大動脈,両側総腸骨動脈に不規則な軽度の拡張所見を認めるのみであつた.腹部大動脈瘤,両側総腸骨動脈瘤,前立腺肥大症,膀胱結石,左水腎症,膀胱後部腫瘍の術前診断で開腹したところ,腫瘍は左内腸骨動脈およびその分枝血管から構成され血栓で充填された巨大動脈瘤と同定された.本例は狭義の孤立性内腸骨動脈瘤ではないが,病変の首座は左内腸骨動脈瘤であつた.従来腸骨部動脈瘤の診断には血管造影法がすぐれているとされて来たが,本例のように内腔に血栓が充填し,血流が乏しい症例では血管造影法のみでは動脈瘤の正確の大きさ,広がりを認識できないこともあると考えられた.

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