日本内科学会雑誌
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下垂体-副腎皮質系の抑制が認められた偽アルドステロン症の1例
岡崎 昭太郎松井 信夫新実 光朗
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1984 年 73 巻 5 号 p. 666-670

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抄録

甘草の根の抽出物の鉱質コルチコイド様作用はグリチルリチンの水解産物であるグリチルレチン酸に基づくと考えられており,この作用による偽アルドステロン症の報告は多い.一方,グルチルリチンおよびグリチルレチン酸製剤が広く臨床的に用いられているが,その糖質コルチコイド作用に関する報告は少ない.今回,我々はグリチルリチン投与により出現した偽アルドステロン症例で,下垂体-副腎皮質系の抑制傾向を認めたため,一旦諸症状,検査成績が正常化後,グリチルリチン大量負荷テストを施行し,本薬物の作用機序に考察を加えた.本症例で観察されたレニン-アルドステロン系の顕著な抑制は,フロセミド立位負荷試験,アンジオテンシンII試験の結果と合わせ,グリチルレチン酸が鉱質コルチコイド活性を有するとする,従来の報告と一致した.又,グリチルチリン大量負荷に伴い,血中コーチゾル濃度の低下.尿中17-OHCS排泄量の減少と共に血中ACTH濃度も低値を示し,この下垂体-副腎皮質系が抑制された時期に行なつたラピッドACTH試験で,副腎が正常な反応を示したことは,グリチルレチン酸が視床下部-下垂体レベルで副腎皮質機能を抑制していることを示唆する.以上,本症例の観察より,グリチルレチン酸が鉱質コルチコイド活性に加え,弱いながらも糖質コルチコイド活性も有し,レニン-アルドステロン系のみならず下垂体-副腎皮質系も抑制することが示唆された.

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