日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
Dihydroergotamine治療に続発した後腹膜線維症の1例
部分尿崩症の合併と陽性Gaシンチグラフィーについて
小熊 豊西村 正治阿部 庄作長谷川 淳川上 義和井出 肇
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 73 巻 6 号 p. 864-870

詳細
抄録

Dihydroergotamine (DHE), aspirin, phenacetinを服用中に縦隔病変から発症し, 67Ga-citrateの異常集積と特発性部分尿崩症, hypergonadotropinismを合併した後腹膜線維症(RF)の1例を経験したので報告する,症例は72才,男性,胸水を主訴に当科受診. DHEを2年間,鎮痛剤を10数年間服用していた.胸部X線像, CT検査にて縦隔,心陰影の拡大,大動脈弓から心周囲にかけての異常軟部組織の出現を認め, 67Ga-citrateの同部への集積, CRP陽性,血沈亢進, IgG増加,肝機能異常などを伴つた. DHE服用以前は全く正常であつたことからDHEを中止して経過観察したが, 1年後に左下肢の腫脹,陰のう水腫,睾丸の硬化性圧痛病変を併発した.腎RI, IP検査で左尿管の狭窄と腎障害を, RI静脈造影で左総腸骨静脈の閉塞を認め, CTでは縦隔部病変と共に,第2腰椎近傍から分岐部を越えた大血管周囲に腫瘤様陰影がみられた. Gaシンチグラフィーでは同部に一致して新たな集積像が出現した.開腹時組織学的検索より急性期RFと診断し,尿管の剥離・固定術を施行した後にステロイド療法を開始したところ,線維性病変の完全消失,各種検査成績の改善を認めた.一方本症例では,当初より低張多尿が続き,内分泌学的検索からは部分尿崩症,睾丸機能不全型hypergonadotropinismに合致する成績が得られた.下垂体に器質的病変を認めないことより,薬剤誘発性RFに特発性部分尿崩症を合併した極めてまれな症例と診断した.

著者関連情報
© (社)日本内科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top