日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
両側性水腎症により腎性尿崩症を呈した1例
秋山 哲雄中本 安三浦 亮
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 73 巻 6 号 p. 871-875

詳細
抄録

子宮頚癌により広範性子宮全摘術後,両側性水腎症,腎性尿崩症を呈し,間歇的自己導尿法により改善をみた1症例を経験したので報告する.症例は48才,女性. 43才の時,子宮頚癌(病期I)にて広範性子宮全摘術を受けた. 1982年6月頃から口渇,多飲および1日4~6lにおよぶ多尿が出現し,精査のため1982年8月2日当科入院.身体的には皮膚はやや乾燥し,軽度の脱水傾向がみられる以外には異常所見なし.検査では尿糖陰性,尿比重1.004,血清Na 150mEq/l, K 3.4mEq/l, Cl 124mEq/l.耐糖能異常なし.眼底,視野異常なし.水制限試験では尿浸透圧の上昇はみられず高張食塩水負荷(Carter-Robins試験)でも尿量,自由水クリアランスの減少なし.ピトレシン5Uの投与でも尿量,尿浸透圧に変化はみられなかつた.血漿ADH 2.9pg/ml.トルコ鞍X線像異常なし.排泄性腎盂造影では両側性水腎症の所見を呈す. urodynamic studyでは多量の残尿がみられ, areflexic neurogenic bladderで両側IV度のvesicoureteral reflux (VUR)を認めた.以上よりneurogenic bladder, VUR,水腎症,腎性尿崩症と進展したものと診断した.治療は,サイアザイド剤の投与および間歇的自己導尿法を指導し, 1日6~7回の自己導尿を行ない残尿量は減少し,尿量は1日約2lと改善をみている.類似症例は国内外にみられず,その成因と病態についても言及した.

著者関連情報
© (社)日本内科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top