日本内科学会雑誌
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日本人胃癌とヒト主要組織適合性抗原(HLA)
橘田 輝雄岡田 豊次岡部 治弥
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1984 年 73 巻 7 号 p. 953-960

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抄録

本邦における死因で第1位を占める悪性新生物中,最も頻度の高い胃癌に関して,その発生要因の一つとして,遺伝因子関与の有無を検討する目的で,我々はHLA抗原をとりあげ, HLA抗原タイプと胃癌感受性との関連性を調べた.対象はHLA-A, B抗原に関して171名,内74名にHLA-DR抗原も検索した,対照は第8回国際ワークショップに用いられた非血縁日本人パネルで, HLA-A抗原は949名, B抗原は950名, DR抗原は884名である. HLA-A抗原には有意の差を示す抗原タイプを認めなかつたが, HLA-B抗原に関してはB15, HLA-DR抗原に関してはDR5が胃癌患者に有意に増加していることがわかつた.またB15, DR5両抗原を同時に持つ群についても,胃癌患者群に有意の増加を認めた.中でも, B15とDR5が共に女性胃癌患者に顕著な増加を示し,年令別ではB15で若年程その傾向が強く, DR5は50才以上に有意の増加を認めた.またB15, DR5共に早期胃癌は対照群と比較して差がなかつたが,進行胃癌では有意の増加が認められた.特にB15に関しては,切除不能例が著明な増加を示した.進行胃癌のBorrmann分類では, B15に関してBorr. 3に有意の増加, Borr. 4に増加傾向, DR5に関してはBorr. 4に有意の増加を認めた.組織型分類では未分化型胃癌がB15とDR5に有意のかたよりを示した.

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