日本内科学会雑誌
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本態性高血圧症患者および正常血圧者における尿カリクレイン排泄動態に関する研究
猪狩 友行
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1984 年 73 巻 8 号 p. 1149-1157

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抄録
本研究では,軽度の食塩摂取制限下にある軽症本態性高血圧症患者(EH)ならびに正常血圧対照者(NT)につき, 24時間尿中カリクレィン排泄量(UkalV)を比較し,さらに日常生活で経験しうる程度の食塩負荷に対するUkalVの変化を調べた.対象は金例入院患者であり, EH群21例, NT群12例の計33例である.入院後,食塩摂取量を6g/日とし,この条件下でUkalVを含む諸検査を行なつた.次いで5日間食塩摂取量を16g/日に増量し,この期間中のUkalVならびに24時間尿中電解質排泄量を測定した.カリクレインは合成基質を用いたエステラーゼ法および一部の症例では直接的放射免疫測定法によつても測定した.食塩6g/日下ではUkalVはNT, EH両群間に有意差を認めなかつた.食塩負荷3~5日目においてNT群では, UkalVはいずれの方法で測定した場合にも有意に増加し,尿中ナトリウム排泄量と正の相関関係を示した.一方, EH群では食塩負荷によりUka1Vは負荷前値が低下していた例では増加し,負荷前が高い例では減少する傾向があり,全体としては有意な変化を示さなかつた.この結果,負荷3~5日目のUkalV平均値はNT群に比してEH群で有意に低値であつた.本研究により本態性高血圧症患者の尿中カリクレイン排泄量の評価に際しては食塩摂取状態を考慮すべきであることが示唆された.
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