日本内科学会雑誌
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131I-metaiodobenzylguanidineシンチグラフィーにより診断しえた異所性褐色細胞腫の1例
久保 進今村 俊之木下 真吾田川 秀樹福井 純古賀 秀隆原 耕平平湯 秀司和泉 元衛長瀧 重信
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1984 年 73 巻 8 号 p. 1201-1208

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抄録

褐色細胞腫の診断法として最近注目されている131I-metaiodobenzylguanidine (131I-MIBG)シンチを用いて診断しえた,異所性褐色細胞腫の1例を経験した.症例は54才,女性で,約12年前より高血圧を指摘されており,精査のため入院した. 32才と43才の時に甲状腺切除術をうけており, 43才の時の診断は乳頭腺癌であつた.入院時,血圧150/100mmHg.眼底scheie H2S2.腹部触診にて,臍のやや右下方に圧痛のある鶏卵大の腫瘤を触知した.入院中,著明な動揺性の高血圧を示し,頭痛,発汗,動悸を伴つていた.血中,尿中noradrenalineと尿中VMAの高値を認めた. 131I-アドステロールを用いた副腎シンチやCTスキャンでは,両側副腎には異常を認めなかつた. 131I-MIBGシンチでは,腹部腫瘤と同じ部位に131I-MIBGの集積を認め血管造影やCTスキャンでも腫瘤が確認された.当大学第一外科で摘出された腫瘍は, 46.5gで,組織診断はparagangliomaであつた. MIBGはnoradrenalineと同じpathwayを通つてカテコラミン貯蔵顆粒内に取込まれ,副腎原発例はいうまでもなく,異所性例,多発例,転移例などの局在診断の困難な褐色細胞腫の診断にも極めて有用であるとされている.本例は,甲状腺乳頭腺癌を合併していたが,このような例は本邦では3例の報告があるのみで極めてまれで,一般には偶然の合併と考えられている.

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