日本内科学会雑誌
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Vincristineによる視神経障害を来したnon-Hodgkinリンパ腫の1例
橋本 憲一赤川 志のぶ高清水 一善田村 厚久窪田 哲朗室田 直樹田ノ上 雅彦桃井 宏直光永 慶吉
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1984 年 73 巻 8 号 p. 1217-1221

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抄録

Vincristineによる副作用として,末梢神経障害はしばしばみられる.しかし,中枢神経である視神経障害は極めて希れで,本邦では末だ報告をみない.今回,我々は, non-Hodgkinリンパ腫の多薬併用療法中, vincristineによると思われる視神経障害を来した1例を経験したので報告する.症例は43才,男性.昭和56年2月ブドウ膜炎にて発症,次いで,発熱,表在リンパ節腫大を来し,当初,サルコイドーシスとしてprednisoloneを投与され,一時下熱した.昭和57年7月より,再び38~39°Cの発熱,表在リンパ節腫大が出現,肝機能障害,胸水,腹水も加わり重症化した.頚部リンパ節生検の再検討によりlymphoepitheloid cellular lymphoma (Lennert's lymphoma)と診断, COPP療法にて下熱し,諸症状の改善をみた.しかし, 2クール目施行中に視力障害および末梢神経障害が出現.頭部CT,脳脊髄液,眼底,眼圧,いずれも正常で,視野の暗点拡大と後天性色覚異常あり. vincristineによる球後視神経障害を疑い,投与を中止したところ,次第に眼の自他覚症状は改善した.これらの経過から,悪性リンパ腫によるものとは考えられず, vincristineによる視神経障害と診断した. vincrlstineは主に胆汁より排泄されるとされ,本例においては,肝機能障害により本剤の神経毒性が増強されたものと思われる.

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