日本内科学会雑誌
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僧帽弁狭窄症におけるいわゆるmyocardial factorに関する研究
1.僧帽弁狭窄症にみられる左室壁運動異常についての臨床的検討2.僧帽弁狭窄症の左室心筋病変についての病理学的検討
尾崎 治夫
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1985 年 74 巻 4 号 p. 430-439

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抄録

従来から,僧帽弁狭窄症(MS)の中に左室機能低下例が存在し,これがMS特有の血行動態から説明し難いことから,その原因としてmyocardial factorなる因子が想定され,種々の論議がなされてきた.古くはリウマチ性病変の左室心筋への波及が,近年では僧帽弁弁下病変による機械的因子が,その主たる要素として重要視されている.本論文では,このmyocardial factorの本態を究明すべく,第1編としてMSにおける左室壁運動異常を弁下病変を関連づけて, MS43症例につき臨床的検討を行ない,さらに第2編としてMSの剖検心12例につき,左室心筋病変の病理学的検討を行なつた.臨床的検討では,弁下病変の強い例に壁運動低下例が多く存在し,かつ弁下病変による機械的な制約が一因となつている可能性を59%に認めたが,びまん性低下例,心尖部限局例といつた弁下病変からは説明できない例がそれぞれ9%, 4%にみられた.またantero apical wallに壁運動低下を示すものが53%を占めた.病理組織学的検討では,リウマチ性心筋炎またはその後遺症とみられる心筋病変が83%にみられ,その病変の強い例では臨床的に左室壁運動のびまん性低下を認めた.また左室前壁の心筋には外層に特異的に萎縮がみられる例が71%にあり,この所見と左室antero apical wallの壁運動低下との関連が示唆された.以上MSにおけるmyocardial factorとしては弁下病変による機械的因子のみならず,心筋病変そのものも重要であると考えられた.

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