日本内科学会雑誌
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三尖弁閉鎖不全の発生およびその進展にかかわる三尖弁形態異常の心エコー図法的検討
三神 大世
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1985 年 74 巻 5 号 p. 549-557

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抄録

本研究の目的は,臨床例における諸種の三尖弁形態変化と三尖弁閉鎖不全との対応について総合的に検討することである.対象154例について,断層心エコー図法を用いて三尖弁形態を観察し,また,パルスドプラ法にて三尖弁閉鎖不全の有無と1+から4+に至る重症度を判定した.先天性の弁形態異常は9例で,うちEbstein奇型や三尖弁異形成で3+以上の重症三尖弁閉鎖不全との関連が深かつた.残る145例については,三尖弁輪の大きさ,弁器質的変化,弁輪線を基準とした収縮期の弁位置ならびに弁尖接合形態などを分析した.弁輪拡大の程度は三尖弁閉鎖不全の重症度と良く対応した.三尖弁閉鎖不全の発生頻度は,弁器質的変化(15例),弁尖の6mm以上の前方偏位(17例)および弁尖接合の欠如(6例)で100%,また,不整弁尖接合(12例)で92%と高頻度であつた。3+以上の重症三尖弁閉鎖不全の発生頻度は,ドーム形成を伴う弁器質的変化(4例)と弁尖接合の欠如で100%, 6mm以上の前方偏位で88%と高かつた.一方,弁後方偏位は, 3mm以上(44例)ないし6mm以上(16例)のいずれで定義しても三尖弁閉鎖不全の有無,重症度との関連が希薄であつた.これらは,三尖弁閉鎖不全の発生と進展の機序を解明する上で,また,臨床上,断層心エコー図法にこて三尖弁閉鎖不全を検索する上で示唆に富む成績と考える.

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