日本内科学会雑誌
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インスリノーマ非手術例における薬物療法の検討ジフェニルヒダントイン,カルシウム拮抗薬の併用療法の有用性
今中 俊爾松田 成器伊藤 貴志男松岡 徹岡田 義昭
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1985 年 74 巻 5 号 p. 590-596

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抄録

インスリノーマの治療法は外科的摘除が中心だが,今回我々は高令インスリノーマ例を経験し,ジフェニルヒダントイン(DPH)200mg/日と,カルシウム拮抗薬であるジルチアゼム180mg/日の併用療法を試みた. FPG, IRI, IRI/PG, CPR/PG,およびOGTT,さらに低血糖症状の発現頻度により効果判定を行なつたところ, FPGは薬物非投与時平均34.3±11.8mg/dlから投与中,平均64.2±17.2mg/dlと有意に(p<0.OO1)上昇し, IRI/PG, CPR/PGはそれぞれ0.37±020, 0.07±0.03から0.25±0.10, 0.04±0.01へと低下傾向を示したが,有意差はなかつた.両薬投与中,低血糖症状は消失しその有用性を確認した.さらに, FPGの上昇は併用時において, DPH300mg単独投与(FPG 60.0±21.2mg/dl, IRI 8.7±3.9μU/ml)と同等であり, 200mg単独投与(FPG 31.3±10.6mg/dl, IRI 10.6±3.5μU/ml)では,低血糖症状が出現した.またカルシウム拮抗薬の単独投与では血糖値に有意な改善を認めず(FPG;ジルチアゼム180mg 34.2±9.2,ベラパミル120mg 32.6±11.4mg/dl),併用による効果増強を示唆した.又, β遮断薬としてプロプラノロール30mg/日では,低血糖持続し(FPG 29.5±9.2mg/dl, IRI 6.0±1.8μU/ml)有効とはいえなかつた.手術に問題のある高令者をはじめとして有効かつ長期投与可能な薬物療法として,今後検討の余地があると思われる.

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