日本内科学会雑誌
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急速に末期腎不全へ進行するループス腎炎の臨床的検討
吉田 雅治斉藤 元章辻 正人有村 義宏副島 昭典井上 明夫中林 公正北本 清長沢 俊彦
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1985 年 74 巻 6 号 p. 748-757

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抄録

最近我々が経験した,母疾患であるSLEの発症と同時に,あるいは腎症が発現してから数年以上経過してから,急速に腎不全が進行して末期腎不全に陥つたループス腎炎(RPLN) 11例の臨床所見と検査所見の特徴について検討した.その結果,発症時から腎機能の低下が著しく, 1ヵ月以内に死亡した3例(Group I, hyperacute RPLN)と,約1ヵ月間のネフローゼ症候を経過してRPLNへ進行し,約1ヵ月後に腎外症状により死亡した3例(Group II, acute RPLN),および持続性蛋白尿ないし血尿の時期を1~3年経過した後に,短期間のネフローゼ症候を経てRPLNに進行した5例(Group III, accelerated RPLN)の3群に分類された.組織学的には,全例管内性増殖性病変と同時に,半月体形成腎炎の像を呈し,さらにGroup Iの3例は細動脈のフィブリノイド型血管炎を伴つていた.検査所見上,血清補体の著明な低下,血中免疫複合体(CIC)レベルの上昇および中~大分子量サイズのIC活性の存在,凝固線溶亢進状態との共通した特徴を示した.このような急激な経過をとらないようにするためには,検査所見の特徴から早期に本病型を診断し, SLEの免疫学的活動性を充分に抑制することが最も重要である.不幸にしてこのような状態を生じた場合には免疫抑制療法に抗凝固線溶療法を併用し,かつ適切な時期に透析治療を導入することが臨床上極めて重要と思われた.

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