日本内科学会雑誌
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多発性筋炎に腸閉塞様症状ならびに腸管〓腫様気腫を合併し,高圧酸素療法により改善した1症例
朴 英薫加納 正西田 修吉田 弥太郎大熊 稔内野 治人三宅 健夫光野 重根小林 展章
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1985 年 74 巻 6 号 p. 808-812

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抄録

Creatinine phosphokinase (CPK)の異常,すなわち著明なMB isoenzymeとmacro CPKを認めた多発性筋炎(PM)に腸閉塞様症状ならびに腸管〓腫様気腫(PCI)を合併し,高圧酸素療法により改善した1症例を経験したので報告する.症例: 76才,女性,多発性筋炎と1981年5月に診断.ステロイド投与により改善,経過観察中1982年3月,腹部膨満感,嘔吐が出現.腸閉塞の診断で本院第二外科へ入院.諸検査にて機械的閉塞部位は証明されず, PMとの関係精査のため第一内科入院.四肢筋萎縮以外理学的に異常所見なし.検査では, CPK, LDHが軽度上昇していたが, GOT, GPT,尿中creatine量, creatine indexは正常値であつた.腸閉塞様症状時の腹部単純X線写真では小腸壁に著明なガス像がみられ,小腸造影でも空腸壁に明らかな壁内ガス像を確認した.以上より腸管〓腫様気腫(PCI)と診断した.腹部CT scanによつても腸壁のガス像が描出された.高圧酵素療法により,小腸ガス像は減少し,諸症状も改善した. PMに消化管病変を合併することはまれで,膠原病では強皮症(PSS)によるものが多いまたPCIの合併もPSSでは報告されているがPMでは殆ど報告されていない.このようなまれな症例に,高圧酸素療法を施行し,症状に改善を認め,さらにその小腸壁ガス像の変化をCT scanにより比較検討できた報告は,他にはなく,同様症例の累積,検討が期待されるところである.

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