日本内科学会雑誌
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ベクトル心電図を用いた左室機能の評価
金丸 修三
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1985 年 74 巻 7 号 p. 898-908

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抄録

左室駆出率(LVEF)は,急性心筋梗塞患者の左室収縮機能を反映し,重症度や予後の判定に有用である.本研究は,ベクトル心電図(VCG)のQRS所見からLVEFを推測することを目的として行なつた.対象は,急性心筋梗塞111例であり,これをtraining group 62例とtest group 49例に分けた. VCGでは, QRS所見について, 158個のパラメーターを設定し,各パラメータのLVEFに対する相関性を検討した. LVEFは, RI心血管造影法より求めた. VCGパラメータの中で, LVEFに対して最もよい相関性を示したものは, 0.03秒ベクトルの水平面方位角(0.03Az)であり,相関係数はr=0.624, p<0.001であつた. 0.03AzとLVEFとの相関性は, training group, test groupともに良好であり,再現性が確認された.全症例を対象として, 0.03AzからLVEFの推測を試みた.診断基準を『0.03Azが-30°以上の場合には, LVEFは正常(55%以上)である』とすると,診断率は, sensitivity 68.1%, specificity 78.9%, predictive accuracy 86.0%と高率であつた. 0.03Azが-60°未満である23例中22例(95.7%)でLVEFの低下を認めた.心尖部梗塞を合併した32例では,合併していない群に対してLVEFは有意に低下していた.このことより,心尖部梗塞の合併の有無は左室機能に重要な影響を与え, 0.03Azは心尖部梗塞を反映するためにLVEFとの間によい相関性を示すと考えられた.以上より, 0.03AzはLVEFを反映し,臨床上簡便かつ有用な指標であると考えられた.

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