日本内科学会雑誌
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血清コリンエステラーゼ異常症の1例
吉川 俊史山下 直宏加藤 弘巳矢野 三郎
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1985 年 74 巻 8 号 p. 1103-1107

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抄録

全身倦怠感および不定愁訴により来院した28才の女性.外来初診時,血液検査にて血清コリンエステラーゼのみ0.24δpHと低値を認めたほかは,肝機能および肝胆道系酵素に異常なく,血清タンパク.アルブミンの低値も認めなかつた.外来通院にて不定愁訴に対する治療を行なうも,その間常に血清コリンエステラーゼのみ低値を示したが,他の血液検査には異常を認めなかつた.入院精査するも,肝臓に異常なく,甲状腺機能も正常,妊娠,その他の異常も否定された.家族性コリンエステラーゼ異常症を疑い, dibucaine nmmber, fluoride numberを調べたがともに正常.両親の血清コリンエステラーゼを調べたところ,父親は0.36δpHと低下,母親は正常であつた.父親,本人の血清コリンエステラーゼが中等度低下しており,母親の活性が正常なことから,父親がE1u/Elsのヘテロのsilent型遺伝子を持ち,それが娘にE1u/E1sの型で遺伝されたものと考え,血清コリンエステラーゼ異常症と診断した.患者の父親の両親がすでに死亡していること,また患者は一人娘であり,いまだ未婚であることから十分な家族調査はなされていない.しかし現在まで我が国での家族性コリンエステラーゼ活性異常症の報告はまれであり,貴重な症例と考えて報告した.

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