合併心奇型を伴わない先天性修正大血管転位症はまれな疾患であるばかりでなく, 50才以上の長期生存例は極めて少ない.本症例は52才男性で, 47才時より誘因なく心不全状態を示し始め入退院を反復した.心音はII音が単一で亢進し,また胸部X線写真では,著明な心拡大と,肺高血圧像を示した.心電図上, V1,はQS型, I, aVL, V5, V6にQ波が欠如していた.心超音波断層像で左側房室弁は三尖弁であり,左側心室造影では解剖学的右室の像を示した.剖検にて,著明な心筋肥大,心拡大,心筋内びまん性線維化が認められた.合併心奇型のない本症例が示した心筋の変化は,これまで言われていたadaptation failureを具体的に示す像と考えられた.