1986 年 75 巻 12 号 p. 1730-1734
症例は71才男性で安静時の胸痛発作にて緊急入院した.心電図上II, III, aVFでST上昇が見られたが-過性で,血中諸酵素値の上昇は認められず,異型狭心症と診断した.本症例に冠動脈造影を行ないJudkinsカテーテルより右冠動脈内にアセチルコリン20μgを注入した所,胸痛発作が出現し,徐脈となり,心電図上II, III, aVFでST上昇が認められた.この時冠動脈造影にて右冠動脈に強度の冠〓縮を認めた.ニトログリセリン投与後,右冠動脈は拡張し,有意な器質的狭窄が見られなかつた.アセチルコリンは冠動脈平滑筋内のムスカリン受容体に作用し,冠〓縮を起こしたものと考えられ,副交感神経系と冠〓縮との直接の関連が示唆された.