1986 年 75 巻 3 号 p. 395-399
症例は35才,女性.昭和49年重症筋無力症,昭和53年全身性エリテマトーデスと診断された.昭和54年胸腺摘出術を受け,ステロイドを長期服用していた.昭和58年7月左下腿痛出現,同9月入院となつた.入院後CTで左下腿皮下膿瘍疑われ切開排膿実施,膿汁の塗抹標本で好中球の胞体内に抗酸菌の集簇が認められlepra ce11を思わせたが,培養でMycobacterium kansasiiが同定されこれによる皮下膿瘍と診断した.本菌の肺外感染例は日本では極めてまれで皮下膿瘍発生例の報告はない.本例は好中球機能低下,特にその活性酸素産生低下が観察され,加えて胸腺摘出,ステロイド長期服用による細胞性免疫能低下があいまつて感染の誘因となつたと推測した.