日本内科学会雑誌
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妊娠中に発症した一過性尿崩症の1症例
河田 俊一郎森本 勲夫桐山 健加藤 有史二宮 日出世小松 賢市一瀬 允長瀧 重信
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1986 年 75 巻 4 号 p. 507-511

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抄録

妊娠中に発症し,出産後改善がみられた一過性尿崩症について報告する.症例は32才,女性.主訴は口渇,多飲,多尿,妊娠8週目より多飲を訴え,出産直前の尿量は5l/日であつた.帝王切開にて正常男児を出産.出産後DDAVP(デスモプレシン)で尿量が一時減少したが再び多尿となり当科へ入院する.入院時身体所見は血液生化学検査に異常なく,尿比重は1.002であつた.脳下垂体前葉機能は正常であつたが,水制限試験,ピトレッシン試験で下垂体性尿崩症と診断した. DDAVPの再投与で尿量は減少した.その後, DDAVPの投与量を漸減し出産後23日に中止したが尿量の増加もなく1日3l前後であつた.分娩後, 3カ月の尿量は1~2l/日で,水制限試験も正常反応となつた.分娩後9日, 13, 14, 34日目のADH分解酵素活性はコントロールと有意差はなく,明らかな原因は不明であつた.

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