1987 年 76 巻 11 号 p. 1680-1689
心タンポナーデにおける弛緩期の左室循環動態を実験的,臨床的に検討した.弛緩期の指標として等容性弛緩期左室圧下降脚時定数(Tbf),漸近線(Pbf), Pbf=0時の時定数(Tln),等容性弛緩期時間(IRT)を測定し,心タンポナーデの重症度は1回心拍出量(SV)または1回心拍出係数(SI)で表わした.実験的に心タンポナーデでは奇脈,左室収縮期圧の低下, SVの減少, Pbfの上昇, Tbf, TlnおよびIRTの延長を認めた.臨床的にはSIの減少とともにTbf, Tln, IRTは延長し, Pbfは上昇した. IRTを心拍数で補正するとその変化は著明になった.以上の結果から,左室弛緩期指標は心タンポナーデの重症度を推定するのに有用と思われた.