1987 年 76 巻 11 号 p. 1725-1729
症例は34才,女性.主訴は易出血性の口内炎と吐血であり,入院時内視鏡検査で食道に広範な出血性びらんを認めた.口腔粘膜生検組織診で表皮細胞間に水疱形成および棘細胞,また蛍光抗体直接法にて表皮細胞間にIgGの沈着を確認した.経過中全く皮疹なく1年以上病変が粘膜に限局していたため,粘膜天疱瘡と診断した. βメサゾン4mg/日静注8週間で口内炎および食道炎は軽快した.その後の内視鏡検査で早期胃癌が発見され,胃亜全摘術を施行した(胃体中部前壁IIc (4×5cm),深達度m,未分化型腺癌).食道病変および早期胃癌を合併した粘膜天疱瘡は本例が本邦第1例目と思われるので報告する.