1987 年 76 巻 12 号 p. 1876-1880
症例は55才の男性.昭和48年口唇癌,同52年伝染性軟属腫,免疫不全症候群と診断された. 59年末梢血の異常リンパ球の存在, ATLA抗体陽性にてATLと診断された.同60年5月発熱,呼吸困難のため入院した.真菌性肺炎の疑いで加療,症状は改善したが,第25病日より左半身麻痺が出現した.頭部CT検査で一部エンハンス効果のある低吸収域をもった腫瘤性病変を認め,脳膿瘍を疑い治療したが,第33病日死亡した.剖検では,中枢神経系へのATL細胞浸潤がみられた.経過中ATLに対する治療は行なっておらず,慢性型ATLの自然経過を観察しえた症例と考え報告する.