1987 年 76 巻 5 号 p. 730-735
SLEでprednisoloneとcyclophosphamideによる免疫抑制療法を施行中,神経症状が出現し,剖検にて脳原発悪性リンパ腫の合併を認めた1症例を経験した.本症における脳室周囲CT高吸収域,髄液泳動上γ-globulin分画の上昇, oligoclonal bandの出現は,悪性リンパ腫の診断に重要な所見と考えられる.文献的には,自己免疫性疾患や臓器移植に伴う免疫抑制状態で,脳原発悪性リンパ腫が発生するとの報告があるが, SLEの免疫抑制療法中に発生した例は欧米で2例の報告を見るのみで,本邦ではその報告を見ない.自験例と文献上の症例より,脳原発悪性リンパ腫の発生機序に免疫不全状態の関与が示唆される.