日本内科学会雑誌
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外傷を契機に発症し,経過中に橋周囲の脱髄を呈したと思われるantidiuretic hormone分泌異常(SIADH)の1例
阿部 靖彦佐野 敏男塩之入 洋金子 好宏井上 幸愛
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1987 年 76 巻 9 号 p. 1429-1433

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抄録

外傷による硬膜下血腫を契機として発症した40才男性のSIADH例を報告した.本例は1年余続いていた低Na血症(Na 108mEq/l)に対し, Na 850mEq/日の急速補正がなされた後に,著名な意識障害をきたし当科に入院した.検査所見はSIADHの診断基準をみたし,頭部CT写真では橋周囲に散在性の低吸収領域が見られたが,治療として水制限, Na制限,グリセオール,ヒドロコルチゾン投与を行なったところ, 1週間後には血清Na値,意識レベル,神経症状いずれも改善した.本例は長期にわたる低Na血症が部分的な脱髄を引き起こし,またNaの急速補正により橋周囲の広範な脳浮腫が起こったものと思われた.

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