症例は19才,男性.鯉の胆(きも,以下胆嚢とす)を5個飲み,腹痛,嘔吐および激しい下痢が出現.黄疸および乏尿と浮腫を認め,第7病日にはBUN100.lmg/dl,血清クレアチニン8.4mg/dlとなり,血液透析を7回施行して軽快した.組織学的には急性尿細管壊死の再生期の所見と,メサンギウムに軽いIgAの沈着を認めた.鯉の胆嚢による急性腎不全は未だ成書に記載されていないが,東アジア各国からは数例の報告があり,本邦各地方の研究会などではすでに話題となっている.しかし鯉の胆嚢での腎毒性物質の存在はまだ確認されておらず,病原微生物の可能性も否定されていない.今後,臨床的検討と共に疫学的調査や基礎医学的解明が期待されている.